【Canvas・Duck・帆布。名前が変わっても続く布の歴史】

丈夫な生地を語る時、よく出てくる言葉。
Canvas(キャンバス)
Duck(ダック)
帆布(はんぷ)
実はこれらは別々の言葉ではなく、時代と共に繋がってきた歴史を持っている。
まず「Canvas(キャンバス)」。
語源はラテン語やフランス語を経て広がった言葉で、もともとは麻を使った厚手布を指し、帆船の帆、天幕、作業布など幅広い用途で使われてきた。
その中で、より高密度で丈夫な平織り生地として発展したのが「Duck Cloth(ダッククロス)」。
この“Duck”の語源として有力なのは、オランダ語の doek(ドゥーク)。
「布」や「キャンバス布」を意味する言葉が、時代とともに duck cloth と呼ばれるようになったと言われている。
また、イギリスからアメリカへ渡った麻製キャンバスには、アヒルのマークが刷り込まれていたことから、アメリカで duck と呼ばれるようになったという説も残っている。
ヨーロッパから渡った生地文化はアメリカで発展し、ワークウェア、軍需品、アウトドア用品へ広がっていった。
そこで Duck Cloth は、丈夫な布の代名詞になっていく。
そして日本へ。
日本では古くから、船の帆に使う丈夫な厚手布を「帆布(はんぷ)」と呼んでいた。
帆布とは、「帆」と「布」を組み合わせた日本独自の名称。
江戸時代にはすでに存在した言葉で、明治以降は軍需、鉄道、工業、鞄など幅広い分野へ広がっていった。
今では「キャンバス」と呼ばれることも増えたが、帆布という名前自体は古くから存在する日本語である。
そしてもうひとつ。
明治時代以降、海外から厚手キャンバスやダック生地が流入すると、その呼び名や発音も日本の中で少しずつ変化していった。
Duck Cloth(ダッククロス)や、オランダ語由来の doek(ドゥーク)。
そうした発音や呼び方が訛り、「ズック」と呼ばれるようになったと言われている。
昔、子供の頃に履いていた“ズック”。
ズック靴、ズック鞄。
実はあの言葉も、キャンバスやダックの長い歴史の中に繋がっている。
Canvas。
Duck。
帆布。
そしてズック。
時代や国を超え、名前を変えながら受け継がれてきた丈夫な布の歴史。
名前の歴史を辿ると、生地はもっと面白くなる。



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